2024年1月26日午後から27日夕方にかけて、Theory Meets Blockchain Engineers (TMBE) という暗号学者とブロックチェーン開発者の知見交流を目的とした暗号技術交流会を開催しました。
暗号技術交流会 開催の背景
2023年4月12日にPlurality Tokyoが弊社もスポンサーとして協賛する中で開催され、 ジョージタウン大学の松尾真一郎先生と弊社代表落合が同じ壇上でお話させていただけたご縁がきっかけで「SCIS(情報通信学会) 2024が今度長崎であるので、暗号学研究者とブロックチェーン開発者を交えてSolidity Houseで技術交流会をできませんか」と嬉しいお声がけをいただき、Theory Meets Blockchain Engineeringと題した暗号学者とブロックチェーン開発者の暗号技術交流会が開催されることとなりました。
当日は総勢40名前後の参加者の方々が集まり、そのうち15名が登壇者として議題を提示し、1泊2日の日程で忌憚ない意見の飛び交う熱量の高い場となりました。参加者募集および登壇枠は公開後すぐに埋まる人気であり、参加者は暗号学の分野で世界トップジャーナルに掲載されるような気鋭の研究者や教授、そしてパブリックチェーンを用いて先端的な応用開発を行う古参開発者や若手の気鋭が集まるような状況でした。
登壇紹介
本イベントは11個の開発者の発表と、4個の暗号学者の発表がありました。その中でも公開許諾のとれた発表について紹介いたします。
開発1) Selective Disclosure on X 509 certificates Sybil Resistance via Governmental ID 大野智葵 池田健
開発2) Discreet Log Contracts(Bitcoin上での金融取引を可能にする技術)_桑原 一郎(Crypto Garage)
開発3) PQCzKVM構想 杉井
開発4) Fireblocks(というかMPCウォレット)のわからないところ_谷口 英
<非公開>
開発5) マス向け Contract Wallet の鍵管理について_塩津 拓真 (SIVIRA Inc)
<確認中>
暗号1-1) 暗号アルゴリズムとMPCの安全性の基礎知識_松田 隆宏(産総研)
暗号1-2) SecureMPC_アッタラパドゥン ナッタポン(産総研)
暗号2) 暗号プロトコルとゼロ知識証明_佐古 和恵〔早稲田大学)
暗号3) 暗号応用システムのセキュリティ_松尾 真一郎(Virginia Tech_ Georgetown University)
暗号4) 鍵管理と運用_須賀 祐治(IIJ)
<確認中>
開発6) 巻き戻し可能なブロックチェーン_芹川 葵(no plan inc.)
<非公開>
開発7) Schnorr 署名の Bitcoin Lightning Network への利用(PTLC) 上野寛(うえのかん)(Nayuta)
開発8) ブロックチェーン上のサプライチェーントレーサビリティと秘匿化 安土 茂亨(chaintope)
開発9) Hyperledger関連 (動向と課題共有) _佐藤竜也 池川航史 長谷川学(日立)
開発10) ブロックチェーンとWASM(stylus-go SDKの実装とEVM x WASMの課題)_佐藤優至(mercoin)
<非公開>
開発11) 指名者本人特定機能付きVerifiable Credentialsの実装_渡邉健
結びに
有志の声かけで突然始まった本イベントですが、小倉で開催されるSCIS2025のサイドイベントとしてぜひ来年も開催しましょうと、松尾先生やIIJ須賀様、ひいては参加した方々からの嬉しいお言葉をいただいております。
公開鍵暗号の先駆的な研究で名を知られる産総研の松田先生もご参加いただけましたし、早稲田大学で投票理論やゼロ知識証明を黎明期から研究なさっている佐古先生とその生徒の方々も参加いただけました。
このように高度な議論を日本語で行えるコミュニティが日本に存在していることを有り難く感じるとともに、よりこのコミュニティを成熟させ、暗号技術がこれからの社会のインフラとして使用されるために必要な順序を踏んでいくための一助となればと思うばかりです。